音楽雑談 Vol.3

「大阪フィルとオペラとバレエ」

大阪フィルが、オペラとバレエでオケピットに入ることが少なくなったのは、何時頃からだろうか。世の中には、それは何年頃からだよ、と、ほぼ正確に答える人がいるが、僕にはその才能がない。そこで、資料を探して調べてみた。
 結論から言うと、1988年頃から急に減りはじめているようだ。僕が入団した1967年の頃は、オペラの公演も多く、今では信じられないことだけど、「蝶々夫人」で一週間、四国・九州の演奏旅行、といったことも珍しくなかった。
これも遠い話になってしまったけれど、年に少ないときで二、三公演、多いときで六公演という年もあった。二ヶ月に一回という勘定になる。そんな中で、僕の大好きなプッチーニの「トスカ」「ボエーム」「蝶々夫人」、そして、ヴェルディーの「アイーダ」「運命の力」「椿姫」「リゴレット」「トロヴァトーレ」「ドン・カルロ」「オテロ」、モーツアルト「フィガロの結婚」「魔笛」、ビゼー「カルメン」、マスカーニ「カヴァリア・ルスティカーナ」、レオンカヴァルロ「道化師」、山田耕筰、大栗裕の作品、団伊玖磨「夕鶴」、「ひかりごけ」、その他多くのオペラを勉強させてもらった。また、バレエでは、「白鳥の湖」「眠りの森の美女」「くるみ割り人形」といったチャイコフスキーの三大バレエ、ドリーブ「コッペリア」、その他を、国内のバレエ団や、ボリショイバレエ、レニグラードバレエ、そしてイギリスのロイヤルバレエといった、世界一流のバレエ団のオーケストラ演奏をつとめた。それぞれの専属指揮者の、日本の指揮者と異なった音楽の作り方、オーケストラのコントロールの仕方、ピット内の独特のバランスの取り方、踊りに合わせたアゴーギク(テンポの緩除)等は、とても参考になった。
 再びオペラの話だが、前に列挙したオペラは、勿論全て大掛かりな舞台装置付きだ。楽屋の廊下には、沢山の衣装が吊ってあり、剣、短剣、盃、その他の小道具が整然と大きな箱に入れられて、ずらっと並び、歌い手や、腰に大工道具の入った袋を下げた大道具さん、小道具さんが、忙しそうに行き来していた。
 バレエの場合も同じような光景で、僕はその活気に満ちた雰囲気が、とても好きだった。そして舞台の上は、装置の中に、華やかな衣装を纏った出演者たちが、色とりどりの照明を浴びて、とても美しかった。
 多分、バブルが弾けた頃からだろうと思うけど、そのような公演が減って、替わりに、「演奏会形式のオペラ」といって、オーケストラも舞台に上がって、通常の演奏会のような形でオペラを演奏することが、大阪フィルだけでなく、いろいろなオーケストラで行われるようになってきた。この形態だと、大道具、小道具、衣装、人件費に大金をかけることなくオペラを演奏できるのである。勿論、それはそれで、大きな意義があると思う。舞台装置、衣装、小道具付きの公演より、音楽が純粋に耳に入るので、曲を鑑賞するという面では、より集中しやすいだろう。しかし、よく云われるように、オペラは総合芸術なのだ。すなわち,美術と文学とそして音楽が、一つの作品に集合した芸術だ。「演奏会形式のオペラ」は、文学と音楽の表現はされても、もう一つの大切な要素である美術が置き去りにされている。昨今の日本の経済事情、特にクラシック音楽界の経済事情を考えれば、仕方のないことだと思うけれど、何か寂しい。最近でも、海外からのオペラが数多く公演しているけれど、オペラの上演にはお金がかかるので、入場料が非常に高く、一般市民が気楽にいける額ではない。何とか、少し無理すれば鑑賞できるような入場料にならないものだろうか…………。
 おしまいになってしまったけれど、大阪フィルも、これからもう少しオペラ、バレエに携われるような経済事情になるとよいのにな、と思います。

この項終わり




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